第15回定期大会     <<back next>>
 第2号議案 2003年度運動方針案

 1労働者・国民をとりまく情勢の進展と特徴

1)深刻な雇用・営業・生活破壊と国民の反撃
 日本を代表する企業であるトヨタ自動車が、1兆3千億円にのぼる利益をあげながら、賃上げゼロを押しつけていることが象徴するように、大企業は大量の人員削減、賃下げによって業績のV字型回復を謳歌しています。また政府はこの1年、こうした実態にさらに拍車をかける「産業再生法」の拡大や労働法制の改悪など、大企業のリストラを支援する政策を繰り返してきました。
 その一方で、完全失業者はついに385万人(5.4%)に達し、中高年を中心とした自殺が連続して3万人を突破しました。労働者の実質賃金は4年連続ダウンし、企業の賃下げ攻撃に政府による医療、年金、雇用保険料の引き上げや給付削減などが追い討ちをかけ、多くの仲間とその家族が食料費、被服費など生活必需品の支出を抑えて耐え忍んでいます。
 中小企業・自営業者は、大企業の生産拠点の海外移転による仕事打ち切り、下請単価の一方的切り下げ、価格破壊の進行、金融機関の貸し渋り・貸し剥がしなどによって存続の危機に瀕しています。企業倒産は、バブル崩壊以降2番目の1万9千件にのぼり、存続している中小企業の多くも破綻寸前の状況にあります。さらに農畜産業者は、WTO協定批准のもとで米や輸入冷凍野菜の急増、農産物価格の下落・破壊が進行し、生産費すら賄えない状況に追い込まれています。
 同時に、情勢はきびしさの一面だけでなくたたかいが前進する条件も着実に高まっています。小規模自治体の切りすてに対し、全国町村長会は「粉砕プログラム」を策定して議会の意見書採択、マスコミ意見広告、総決起大会などを実施しています。また、自治体の首長選挙では現職やその後継候補が、自民党や公明党などオール与党の基盤に乗ってもなお破れる状況が広がっています。
 とりわけこの間、これまで自民党を支持してきた保守的な団体からも、小泉政治に対する批判と抗議の運動がまきおこりました。医療費3割負担の導入では、日本医師会、歯科医師会、薬剤師会、日本看護協会が公然と反旗を翻し、凍結・撤回を迫って全国で運動を展開し、徳島県をはじめ全国各地で労働組合や民主団体と地域医師会との懇談・連携がすすみました。
 さらに、中小企業経営の破綻、地域経済を崩壊させる小泉内閣の経済政策に異議を唱えて中小企業団体中央会などが決起しました。また、輸入農産物に対するセーフティガードの発動などを求める農民団体の共同も広がっています。「解雇自由ルール」の導入など労働法制の改悪、医療・年金改悪の反対闘争、サービス残業の根絶を求めるとりくみ、イラク戦争反対などの運動を通じて、労働組合の共同も着実に前進しています。

2)反動的姿勢を強めるブッシュ・小泉政権
 イラク戦争の戦闘終結宣言から5ヶ月以上たった今日でも大量破壊兵器は発見されず、ブッシュ米大統領とブレア英首相は、高らかにうたった勝利宣言とは裏腹に、情報を不正操作し世界を欺いて戦争に突き進んだ疑惑で責任追及にさらされています。ところが、ブッシュ大統領は「ロシアを許し、ドイツを無視し、フランスを処罰する」「グローバリゼーションとは、実のところアメリカ合衆国のドミネーション(支配)の別名である」などと、いっそう傲慢な態度をとり続けています。
 「一極支配」の覇権的姿勢を強めるアメリカへ無批判に追随する日本政府とは対象的に、反戦・反米運動が世界に広がっています。二度の世界大戦の後、米ソによって東西に分断されて軍事的な支配を受けてきたヨーロッパ諸国は、ゆっくりと力をたくわえる方向を歩いてついに通貨統合を実現し、ドルよりユーロの価値が高まりつつあります。
 ひたすらブッシュ大統領に隷属的な忠誠を誓い、イラク戦争を支持し加担してきた小泉首相の責任は重大です。テロ特措法で米軍支援に乗り出し、有事法制で国内戦争体制を完成させ、イラク特措法で戦後はじめて自衛隊の地上部隊を戦地に派遣する法案を強成立させ、さらに「米軍支援法」「国民保護法案」の準備を着々とすすめています。これらは、日本国憲法が否定している「海外で戦争できる国」への復活を企むものです。また、自民党総裁選挙では、「憲法改悪」が公約として公然と掲げられましたが、これらの動きは、日本をアジア諸国と世界からますます孤立させるものです。

3)破綻した小泉改革と「奥田ビジョン」の狙い
 小泉首相の「聖域なき構造改革」は、あらゆる分野において破綻しています。「改革なくして成長なし」とうそぶいた経済は、成長どころか3年連続マイナス成長となり、小泉内閣誕生時に1万4千円台であった株価は急落し、日本国債の格付けが発展途上国なみにまで落ち込むなど、日本経済のデフレ化はとどまるところを知りません。
 財政再建も破綻しています。膨大な国と地方の債務を減らすとして、国民に痛みを強要しながら大銀行への公的資金投入や整理回収機構による不良債権銀行保有株式の買い取りなどをすすめ、労働者や中小企業には課税最低限の引き下げや外形標準課税の導入を打ち出す一方で、大企業・金持ち優遇の税制改革を繰り返し、国と地方の借金はさらに膨らんでいます。
 社会保障改革も、小泉首相のめざす「改革」とは労働者・国民の保険料を増やして国庫負担を削減し、患者や受給者への給付を大胆にカットする財政対策に過ぎず社会保障制度の解体にほかなりません。さらに小泉「改革」は、病院経営への株式会社の参入をはじめあらゆる分野の規制緩和を徹底し、国民生活と社会の安全と安心を破壊しています。
 「小泉改革」の破綻が明らかになるなかで、日本経団連が発表した「活力と魅力溢れる日本をめざして」(奥田ビジョン)は、財界がめざす21世紀社会の狙いを鮮明にしています。それは、?社会保障制度の全面的な解体と消費税の引き上げ、?企業収益を確保する規制改革法の制定、?企業が自由に貿易・投資活動ができる通商政策の展開、?政治との関係強化などです。
 具体的には、?年金・医療などを徹底的に削減しながら、消費税を10%以上に大幅アップすること、?雇用は外国人労働者にも扉を開き、賃金は長時間労働・低賃金でも「本人が好ましく思える制度」にすること、?自治体議員は、無報酬で職務を遂行すること、などを提言しています。さらに「奥田ビジョン」は、企業献金を拡大して政治を完全に財界の支配化におくことをねらって、財界政策の完全実施を求めています。