第15回定期大会     <<back next>>
 2003年国民春闘と賃金闘争

1.運動の到達点と課題
(1)03春闘は、空前の倒産、失業、医療・年金改悪の進行、解雇自由化法案などの労働法制改悪が策動されるもとでたたかわれてきました。財界は、「賃上げは論外、要求をかかげ実力行使を背景に社会的横断化を意図してたたかう春闘は終焉した」として、一方的に「春闘解体」を宣言してきました。また、03春闘は罪もなき多数の市民をも殺戮するアメリカのイラク戦争が開始され、「戦争か平和か」が鋭く問われるなかでたたかわれました。
 徳島では、アメリカがイラクに攻撃を開始した3月20日、県議会で自民・公明の野党議員が大田知事の不信任決議を数の力で強行しました。2つの暴挙が同時におこなわれるなかで、「イラク攻撃NO!」「不信任NO!」の世論をひろげるなかで、県知事選挙も春闘の大きな課題としてたたかわれました。
(2)結果的には、賃金闘争では、私たちの要求にはほど遠く、保険料の引き上げや医療費の負担増にも追いつかない結果となり、アメリカのイラク攻撃は敢行され、知事選挙では8千余票の僅差で惜敗し、国会では相次ぐ労働関連法制の改悪が強行され、有事法制やイラク特措法まで可決されるなど厳しいものとなりました。
 しかし、賃金闘争では、厳しい状況下で多くの組合が賃金の凍結・賃下げ攻撃をはね返し、昨年を上回る成果をかちとっています。リストラ「合理化」反対のたたかいでも四国JTS電装の女性たちが地域ぐるみのたたかいを前進させてきました。
 また、医療団体や中小企業など小泉構造改革や自民党政治に「ノー」という共同も大きく前進し、世界平和の問題でも、アメリカの戦争に世界中の人々が「ノー」の声をあげ、アメリカの覇権主義への批判も大きく広がり孤立化さえさせています。
 労基法改悪法案でも「解雇できる」を削除し「解雇は、客観的かつ合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、‥‥無効とする」と修正させる成果も得ています。そして、知事選挙においても惜敗したものの、得票は前回より3万7千票上回るなど自民党政治を変えようという県民の意識の変革は着実に前進しています。
(3)私たちは、これら運動の前進に確信をもち、職場・地域で共同をひろげいっそう奮闘しなければなりません。同時に、これだけの悪政のもとでも国民的な規模でのたたかいを組織できない最大の要因は、全労連・徳島労連の主体的力量が決定的に不足していることであり、組織の強化・拡大は切実な要求を実現するうえでも避けて通れない緊急課題となっているといえます。

2.賃金闘争の到達点と課題
1)2003年国民春闘の経過
(1)「あらゆる職場・地域から国民総決起の春闘を」めざす03春闘は、共同をすべての分野・階層にひろげようと秋の全国キャラバン行動から取り組みが始まりました。「要求アンケート」は、11月20日からの労組訪問で取り組まれましたが、不良債権処理などで再編の攻撃が強まるなか金融関係の労組が積極的な協力をしてくれるなど新たな広がりをみせています。今日の厳しい情勢の下で、多く労働組合が対応に苦慮しているのが実態です。いまこそ共同をひろげるチャンスといえます。
 しかし、その取り組みは、情勢にふさわしいものとなりませんでした。11月20日には板野労連も含め16人が参加し、12労組を訪問、12月4日には南部労連が3人で3労組、中部労連が3人で4労組を訪問しました。地域労連による取り組みが定着しましたものの、これは、昨年(52人が97労組を訪問)から大きく後退しています。特に、産別によって位置づけに温度差があり、あらためて意思統一が必要と言えます。「総対話と共同・10万人オルグ」大運動の推進が提起された98年には、121人が197労組を訪問しており、力量がないのではなく位置づけの問題といえます。すべての労組に当たりきる構えと、恒常的な取り組みのできる体制を組織拡大の取り組みと合わせて確立することが求められていると言えます。
(2)12月7日には、2003年徳島県国民春闘共闘委員会を発足させ、1月10日には徳島駅前に20人が参加して新春宣伝行動を展開。日本経団連の「春闘つぶし」攻撃に対し、「国民春闘で雇用とくらしを守り、地域経済の活性化を」と訴え03国民春闘の行動をスタートさせました。翌1月11日には、03国民春闘討論集会がホテル千秋閣で開催され39職場から81人が参加しました。討論集会では、全労連・春闘共闘がかかげる「『雇用、くらし、いのち、平和の安心へ』あらゆる職場・地域から国民総決起の春闘を」をテーマに情勢とたたかい方について基調報告を受けるとともに、重点課題である組織建設を春闘のなかでも重視して取り組むために「要求実現と組織拡大」について徳島建労の林氏から経験を交えた報告を受けました。また、今春闘での特徴的なたたかいについて6つの特別報告もうけ、会場からの15人の発言もあって、かつてない積極的な討論が行われました。1月15日には徳島建労も県本部委員会を開催し、行動を開始しました。1月21日の大企業包囲の統一行動日にはNTT徳島支店前行動と3・13重税反対集会実行委員会の税務署申し入れ行動に参加し、1月24日には、四国JTS電装争議のJT本社行動を200名(徳島から41名)の参加で成功させました。

(3)1月29日に開催予定だった徳島労連第13回中央委員会は、大雪のため2月14日に延期されました。中央委員会では、全労連が掲げる「03国民春闘方針」にもとづきたたかいの方向を?職場・地域・あらゆる分野から国民総決起の春闘を?雇用・生活破壊に歯止めをかける反転攻勢の春闘を?地方政治の民主的転換と結合した地域春闘の前進を?組織を増やし、「全員参加」「提案型」春闘の追求をめざして取り組むことを確認しました。賃上げ要求については、アンケート結果に基づき、平均賃上げ要求月額27,000円、誰でも月額10,000円以上、時間額50円以上の引き上げと、最低賃金要求額として月額150,000円以上、日額7,400円以上、時間額1,000円以上を掲げてたたかうことを決定しました。「はたらく仲間の要求アンケート」の集約結果では、年間収入が増えたと応えたのが10.7%に対し、収入が減ったと答えた人は51%となっています。生活実感で「かなり苦しい」「やや苦しい」と答えた人が64.2%となっていました。賃上げ要求額については平均が27,692円となっています。厳しい情勢を反映し「どれだけ必要か」に比べ「どれだけ要求するか」が大幅に下がっているのが特徴でした。このようななかで徳島労連は、この額が、今日の厳しい情勢を反映させたうえでの組合員の切実な要求と受け止め、アンケート結果を値引きすることなく高く掲げ、?トヨタをはじめ大企業は史上空前の大儲けをしていること?一方で労働者は所得減に加え保険料・医療費等さらなる負担増が待っていること?国民生活の改善なくして日本経済の再生はないことなど、その大儀を明らかにして攻勢的にたたかうことを意思統一しました。また、同時に賃金の底上げを重視し、職場・地域でのたたかい、最賃闘争を強化していくことを確認しました。今春闘では、公務員賃金の切り下げによる官民の相互影響による悪魔のサイクルを断ち切るためのたたかいも重視され、「公務員改革」のたたかいも含め例年以上に官民一体のたたかいを追求することも意思統一されました。
 また、今春闘の大きな課題として労働法制の改悪反対、「公務員制度改革」反対、イラク攻撃・有事法制反対、医療・年金・介護等社会保障の改悪反対、政治革新などをかかげ、一致する要求で共同を大きくひろげてたたかうこととしました。
(4)2月の初旬には、中部労連や板野労連が地域で春闘学習会や決起集会を開催し、地域春闘の強化をめざしました。また、県医労連は、2月3日から9日の間に県医師会や歯科医師会、看護協会など県内の医療団体への申し入れ行動を展開し、労働組合の申し入れに会長が直々に応対するなどかつてない対応に大きな確信を得ました。
 イラク情勢も緊迫するなか、2月11日の建国記念の日に反対する2・11集会を成功させた後、文化センターから徳島駅前まで「イラク戦争反対」のデモ行進も有事法制連絡会で取り組まれ、15日からはピーススクロールが連日それぞれの団体持ち回りで取り組まれました。
 2月14日には、争議支援総行動が取り組まれ、JR、NTT、JT、裁判所、健祥会、国立東・徳島病院への要請行動など終日の行動に29人が参加しました。
 2月20日の地域総行動では、板野労連と徳島市内の労組が徳島駅前、市役所・県庁前の3カ所で29人が一斉宣伝を行い、中部労連は鴨島駅前、西部労連は池田町、南部労連と小松島の仲間はルピア前で宣伝行動を展開、鳴門市従・鳴門市バス労組は同市内に地域配布を、徳厚労も各病院が地域宣伝に取り組むなど、県内21カ所で約9,500枚のビラが配布されるなど世論に大きく打って出ました。また、同日は、県経営者協会への申し入れも行われ、昼休みには120人が参加し「医療改悪ストップ2・20集会」とデモ行進も行われ総行動にふさわしい行動が展開されました。
 2月28日には、四国規模で政府の出先機関などへの要請行動を展開する全労連四国総行動が行われ、徳島からも50人を超える仲間が参加しました。
(5)要求書もほぼ出揃ったなかで、3月3日から5日にかけて各企業を訪問し、春闘の回答確約行動が行われました。私たちは、この行動のなかで経営者に対し?労働者も相次ぐ負担増で生活が大変であり、生計費に基づく切実な要求であること?経営がきびしい時こそ労働者に依拠すべきで、情報開示や同意約款の締結で共通の認識と労使対等のもとでお互いに知恵と力を発揮できるようにすること?不良債権早期処理や医療・年金改悪、増税など一致する要求で共同することなどを申し入れました。とりわけ、どの企業も経営の厳しさを訴えるなかで労働者を大切にしなければいっそう困難になることを強調し、「合意協力型」の労働者に依拠したやり方で経営改善をすすめるよう求めました。
 3月6日には、JA会館において130人が参加し、「春闘を元気にたたかおう」と決起集会が開催されました。集会では、「春闘の情勢と展望」について西川全労連副議長が講演し、労働法制改悪問題で全労働の国重氏がその狙いや重大性を報告。各労組から春闘の取り組みや決意が述べられ、春闘にむけて勢いをつけました。
 3月12日の統一回答指定日にむけて各産別などでの取り組みもすすめられ、3月1日には、JMIUが京都で行われた金属労働者のつどいにバスや宣伝カーで参加、8日には、徳厚労が200人参加して徳島市内で「健保3割負担反対」「イラク攻撃反対」などをかかげ白衣のデモ行進を行いました。
 回答指定日翌日の13日は、健保労組鳴門病院支部が「都南病院つぶし反対」もかかげ2時間のストライキに突入。通信労組のスト集会、3・13重税反対集会、JT徳島支店や地労委要請の争議支援、とくしま生協での昼休み集会などの取り組みが行われました。徳島市藍場浜公園で開催された3・13重税反対集会には、徳島建労、民商・全生連の仲間等1300人が参加しました。
 また、3月27日に開催された、マスコミ文化共闘が呼びかける「鷲の門集会」にも徳島労連の仲間が積極的に参加し、たたかいの輪を広げました。
 リストラとのたたかいでは、3月14日、不当な配転とたたかうNTTの労働者を支援しようと「徳島の会」を発足させました。また、四国JTSは、3月末で閉鎖が強行されると言う状況で、25日にJT本社行動、28日には現地の会社構内で西部地区労の仲間が多数駆けつけるなか工場閉鎖反対集会が開催され、地労委の早期命令を求める要請行動も連日開始されました。賃金職員闘争をたたかう全医労徳島地区協議会は3月28日「賃金職員の正規化と全員の雇用確保」をかかげ「第16回賃金職員集会を開催しました。
 3月20日、ついにアメリカは、国連の決議もないままに、世界世論に反し無法なイラク攻撃を開始しました。イラク情勢が緊迫するなか3月16日の日曜日、有事法制連絡会の呼びかけで「ピースチェーン」の行動が行われ約300人が雨のなか参加し、戦争反対を大きくアピールしました。
 ところが、このどさくさに紛れるように徳島県議会では、自民・公明の野党議員が数の力で大田知事に対する不信任決議を強行しました。これを受けて大田知事は「県民に信を問う」として辞職、5月の知事選挙にむけてのたたかいが開始されました。
(6)春闘の真っ最中に行われた統一地方選挙では、大田県政を支持する県議が大きく躍進しました。4月6日に開催された徳島建労の「不況打開、生活危機突破4・6建設職人総決起集会」においても、大田県政が公共工事について大手ゼネコンから地場企業優先の発注に切り替えたことなどあげ、仕事確保の点からも「県民本位の県政を後戻りさせてはならない」として「大田さんを再び知事に」を大きく掲げたものとなりました。
 一方、職場要求のたたかいは、長引く不況に加え、トヨタなど莫大な利益を上げながらも要求を見送る大手「連合」労組の影響もあり、多くの労組が難航し、5月段階へと持ち越されました。
(7)第74回メーデーは、県内2カ所、西部と中央で開催されましたが、春闘勝利、イラク戦争・有事法制反対、労働法制改悪反対、公務員制度「改革」反対と合わせて県知事選挙勝利の決起集会的なものとなりました。
 5月10日には医労連の仲間約50人が「ナースウェーブ」で医療改悪反対など訴え、13日には、公務員制度改革反対などをかかげた全労連全国キャラバンが徳島入りし、早朝から31人が参加して、国立大学の独立行政法人化の問題点など市民に訴えました。
 5月18日投票で行われた、徳島県知事選挙は、全国からも注目されるなか全建総連、自治労連、JMIU、各地方労連など全国の仲間から大きな激励と支援が寄せられ、かつてない選挙闘争をたたかいました。結果的には、前回得票を3万7千票も上回りながらも、わずか8,789票差で惜敗する結果となりました。
 5月21日は労働法制改悪反対のストを含む全国統一行動日となりましたが、宣伝行動や職場集会・決議程度にとどまり、県知事選の影響もあって、労働者の今後の働き方を左右する労働組合にとって重要な課題にもかかわらず十分な取り組みができませんでした。
 このような状況を経ながら、2003年春闘は、職場要求のたたかいも一部6月に持ち越しながら、夏季闘争に引き継がれ、夏季一時金と合わせて、人事院勧告・最低賃金闘争や平和問題などに重点がおかれるたたかいがすすめられました。

2)賃金闘争の到達点
(1)全労連が6月27日に行った03春闘の賃上げ最終集計は、登録922組合のうち回答引き出しが516組合(56.0%)、妥結組合は(36.2%)で、約3割の組合が有額回答を引き出せませんでした。前年同額以上も189組合ありますが、全体的な傾向としては定昇制度のあるところでの「ベアゼロ・定昇のみ」、定昇制度のないところでは超低額回答が目立ちました。妥結した334組合の単純平均は5,698円(1.79%)で前年比148円(0.08p)の減、加重平均は6,958円(1.96%)で前年比751円(0.08p)減となり、全労連の春闘も組合員の要求にはほど遠い超低額回答にとどまりました。
 一方、連合では、大企業労組がベア要求を見送るなかで定昇維持が焦点となり、加重平均で5,204円(1.66%)にとどまりました。業績がV字回復したにもかかわらず、経営側から賃下げ提案が相次いだ電機では、春闘回答としてひとまず定昇相当分は維持したものの、賃金制度の見直し協議に応ずる「労使合意」が前提となっています。また、自動車では日産がベア1,000円の「満額回答」となったが、1兆3千億円の史上最大の利益を計上したトヨタはベアゼロの代わりに「年間6万円の成果配分」の回答で妥結した。
 多くの大企業労組が要求さえ提出せず、トヨタに代表されるように成果主義賃金の導入を受け入れ、労使一体で「春闘解体」の方向に踏み出したなかで、経営難に見舞われている中小企業の多い全労連の組合が、労働者の要求実現と中小企業を守る政策提言を結合した春闘にとりくみ、一定の到達点を築いてきたことは重要です。
 02春闘で日本医労連や生協労連が協定無視の定昇凍結などに対して、「法的対応」の検討をふくむたたかいを展開した反映として、03春闘では一方的な賃下げ回答が減少する傾向がみられました。
 03春闘で重視したパート賃上げ・「時間給引き上げ要求」のたたかいでは、66組合が引き上げの回答を勝ち取っています。生協労連が28組合平均で4.55円引き上げていますが、一方で、パート賃金を地域水準まで引き下げる攻撃が強まっています。また、大阪府議会では、パート均等待遇を求める請願が全会一致で採択され、国会における「パート議員連盟」の結成や、パート・臨時労組の中央行動に全野党議員がエールを寄せるなど一定の世論喚起に成功しました。
(2)徳島県春闘共闘の03春闘における各労組の平均要求額は、徳島労連がかかげた27,000円の平均要求額にほぼ等しい26,781円となりました。結果的には、9月24日の集約で、単純平均で5,317円(昨年4,772円)、加重平均で6,822円(昨年6,778円)と切実な要求にはほど遠く、保険料や医療費の負担増を見れば生活改善どころか実質的には切り下げられる厳しい内容といえます。しかし、中小企業の厳しい経営環境や財界の賃下げ・春闘解体攻撃のもとで、僅かとは言え昨年を上回る回答を引き出したことは大きく評価できると言えます。
 厳しいなかでも前進した背景には、経営状況の悪化や先行きが見えないことなどを理由に回答を渋る経営者に対し、厳しいなら労使が協力してのりきることを提案し、そのためには、?徹底した情報公開?事前協議・同意約款の締結で、同じ認識と対等な立場を確立することを求めるたたかいを多くの職場で展開できたことです。
 切実な要求を前面にかかげながら、「合意・協力型」「提案型」春闘で、経営者の不況・経営危機攻撃に対処していくたたかいは、今後ますます重要といえます。
 徳島県労働政策課の調査結果(8月4日付)によると、県内(67社)の今年の賃上げ妥結額は、平均で3,712円(67社平均)1.45%となっています。
(3)公務労働者の賃金闘争では、昨年、人勧制度創設以来はじめての本俸マイナス勧告が出され、不利益遡及が強行されました。まともな交渉を行わず一方的に賃下げを強行し、不利益不遡及の原則をねじまげた不法行為に対して国公労連が「権利裁判」に踏み切りました。また、昨秋の地方における賃金確定闘争では、地方組織による自治体申し入れ行動が全国で展開されるなど公務、民間の共同がすすみました。
 マイナス人勧のもとで、自治体のパート、臨時職員などに対する賃下げ,雇い止め攻撃が相次ぎましたが、これに対して東京、埼玉、愛知、大阪、広島などで賃金引き下げをはね返すたたかいが前進しました。とくに東京・公務公共一般や大阪市バス労組で、臨時・非常勤職員の時給切り下げや雇い止めの攻撃に対してストライキを含む粘り強いたたかいで切り下げ中止や解雇撤回を勝ち取った成果は、今後の非常勤職員の賃金・雇用闘争にとっても教訓的です。
 ところが、今年8月8日に出された2003年人勧では、月例賃金は官民格差がマイナス1.07%(4、054円)になったとして、2年連続で本俸を引き下げ、一時金を0.25ヶ月削減、さらに配偶者手当、持ち家の住宅手当を引き下げるなどトリプル賃下げとなりました。加えて、実施時期を4月に遡る(12月の一時金で清算)という不当な不利益遡及を今回も強行しようと言うものです。年収ベースでみると平均16.3万円(2.6%)の減収になり、子育て世代に厳しいものとなっています。
これは、年金・最賃・生活保護などにも大きく影響するだけに、官・民の「賃下げの悪魔のサイクル」を断ち切るたたかいが益々重要となっているといえます。
(4)最低賃金闘争では、時間額1,000円以上、日額7,400円以上、月額15万円以上をかかげ、とりわけ、生活保護基準にも満たない現状の打開を、労働局や最賃審議会はもとより広く市民に訴えてきました。
 地方最賃の審議を前に、6月30日には徳島労働局と最賃審議会に対し、地方包括最賃の大幅な改善と全国一律最賃制の確立、専門部会も含む審議会の公開と意見陳述の機会を与えることなど求めました。その後、公開された審議会には積極的に傍聴参加してきましたが、専門部会は非公開、意見陳述も「文書で十分」として認められませんでした。中央最低賃金審議会は7月24日、全労連・国民春闘共闘・公務労組連絡会などの代表が厚生労働省前で座り込む最中に、03年度の地域別最低賃金の引き上げについて、各ランクとも「ゼロ円」とする目安を厚生労働大臣に答申しました。
 徳島県地方最低賃金審議会は、この目安をうけて7月29日に審議会を開催し、その後、非公開の専門部会で協議した結果、引き上げを要求する労働側とゼロまたは引き下げを求める使用者側が対立したため、審議会において公益委員が示した「ゼロ円」を使用者側が賛成したことで多数決により8月6日に「引き上げない」とする答申が労働局長に提出されました。
 これに対し、徳島労連は8月17日に「異議申出」を提出し、時間額611円は?働いて得る賃金は「労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない」という労基法や最賃法の「労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び公正な競争の確保に資する」とした法の趣旨に反する内容であること。?この額で18〜19歳の単身者が県内の一般労働者と同様の時間(月平均150.6時間)働いたとしても徳島市の生活保護基準では、41,010円と住宅扶助(上限28,800円)が支給されることになるという生活保護基準を下回る低額であること。?パート・臨時等労働者と正規雇用労働者との格差解消・均等待遇の実現のためにも大幅な改善が必要なこと。?不況から脱却し、日本経済を再生させるためにも、消費拡大のために賃金の改善が必要であり、それは個別企業での対応は競争の原理からも困難であり、そのためにこそ最低賃金制度の意義があることを述べ、徳島労連のかかげる最低賃金額を強く求めました。
 しかし、8月22日に行われた審議会では、徳島労連の主張に反論することもなく「すでに議論をつくした結果が先の答申であるとして」あらためて「ゼロ」答申を行い、2年連続の賃上げなしの結果となりました。
 最低賃金体験など通し、世論を喚起するとともに、パート・臨時など不安定雇用労働者の組織化、企業内最賃の協定化の取り組みを強め、賃金の底上げを勝ち取るたたかいを強化しなければなりません。職場からパート時間給の改善を実現し、それを地域最賃に反映させることをめざし、全組合が企業内最賃協定を締結すること。生活保護支給やランク別地域最賃額の逆転現象などを明らかにしながら、地域最低賃金審議会、自治体、地方議会へのとりくみを徹底すること。また、自治体関連非常勤職員の賃金闘争とも結合して、「リビングウェイジ・公契約」運動を推進することが求められています。 あわせて、定昇見直しや成果主義賃金の導入がひろがるなかで、学習等の強化や対応が緊急の課題となってきています。